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新型コロナウイルス感染症をはじめ不安定な社会情勢の中、サプライチェーンは深刻な影響を受け、「ジャストインタイム」から「ジャストインケース」への転換が始まりつつあります。

この内容は、インフォアが英国の製造業の業界団体Make UKと共同で実施した調査「Operating without Borders – Building Global Resilient Supply Chains(国境を越えた事業:サプライチェーンのグローバルなレジリエンスを高める)」の結果を通して、過去2年間に英国の製造メーカーのサプライチェーンが受けた経済打撃や、エネルギー、輸送、原材料コストの上昇、輸送手段の確保による連鎖的な影響を紹介します。

■主な調査結果:

  • 新型コロナウイルス感染症のパンデミック(93%)とブレグジット(87%)がサプライチェーン混乱の要因
  • 80%の企業が、エネルギーコストの上昇がサプライチェーンの混乱を招いたと回答
  • 原材料(79%)と輸送コスト(74%)の上昇、輸送手段の確保(54%)がサプライチェーンの主な課題
  • 約4分の1の企業が51~100社のサプライヤーを、14%の企業が200社以上のサプライヤーを抱える
  • 過去2年間に、3分の1以上の企業がサプライヤーの総数を増やし、約半数の企業が英国内のサプライヤーを増やす
  • 今後2年間で、約半数の企業が英国のサプライヤーを、4分の1の企業がトルコを含む西ヨーロッパのサプライヤーを増やす意向
  • 中間または最終段階のサプライチェーン戦略をとっている企業は全体の約4分の3
  • 5社中1社がデジタルサプライチェーンモニタリングを実施している一方で、中小企業では基本的なアプローチにとどまる

調査によると、過去2年間でサプライチェーンの最も大きな混乱要因となったのはパンデミックであり、93%の企業が何らかの混乱が引き起こされたと答えています(47%が壊滅的または重大な影響と回答)。続いて、EUからの離脱(ブレグジット)と答えた企業は87%でした(32%が壊滅的または重大な影響と回答)。また、スエズ運河の事故は、たった1週間の封鎖だったにもかかわらず、過半数の企業が混乱を引き起こしたと回答しており、極東のサプライチェーンへの依存が浮き彫りになりました。

これに対し、約5分の2の企業(38%)が過去2年間にサプライヤーの数を増やしたと回答しています。英国を拠点とするサプライヤーを増やした企業が5分の2以上を占め(そのうち約半数が大幅なルート変更を実施)、トルコを含む西ヨーロッパのサプライヤーを増やした企業は4分の1以上でした。

5分の2以上の企業(43%)が今後2年間で英国のサプライヤーを増やすと回答し、4分の1はトルコを含む西ヨーロッパのサプライヤーを増加させる意向を示していることから、この傾向はさらに加速していくと考えられます。一方、同期間に、極東のサプライヤーの数を減らすと回答した企業は12%でした。

メーカーはサプライヤーの所在地を変更するだけでなく、数も増やしています。51〜100社のサプライヤーを抱える企業は全体の約4分の1(22%)、101〜200社は15%、200社以上は14%でした。このようなサプライチェーンの複雑化に伴い、サプライヤーをモニタリングするテクノロジーを用いてサプライチェーン戦略を確実に遂行する必要性が高まっています。

サプライチェーン戦略が中間または最終段階にあると回答した企業が大多数(72%)な一方、中小企業の大半は初期段階にあると回答しており、企業が用いる運営戦略の発展度合とサプライヤーの数には明確な関連性が見られます。さらに、デジタルサプライチェーンソリューションの導入に関しては、ほとんどの場合、メーカーは限定的または基本的な事柄にしか注力していません(両方とも28%)。

しかし、デジタル戦略が最終段階にあると回答した企業は5分の1、中間段階にあると回答したのは4分の1(24%)で、大企業の3分の2(64%)は最終段階と回答しています。前向きな傾向として、多くの企業がデジタルサプライチェーンテクノロジーへの支出を大幅に増やすことを計画しており、5分の2以上の企業(42%)が今後2年間で10%以上の投資増を計画しています。

サプライチェーンテクノロジーへの投資を増やした企業では、対応の迅速化(34%)、在庫コストの削減(28%)、業務効率の向上(28%)、キャッシュフローの改善(21%)など、明らかなメリットが得られています。

本調査は、2022年2月2日~23日にかけて132社の製造業の企業を対象に実施されました。

■「ジャストインタイム」から「ジャストインケース」への転換の時期へ

本調査結果は、混乱と変動が急速に常態化している中、グローバル化の流れでメーカーが長年採用してきたオフショア戦略、すなわち仮想的に保証した輸送網や低コスト生産で運用する「ジャストインタイム」方式のプロセスが崩壊したことも示しています。

こうした状況を受けて、企業は、混乱が生じた場合の選択肢を得るためにサプライヤーの数を大幅に増やしており、特に英国や西ヨーロッパのサプライヤーを増やしています。こういった傾向は今後2年間でさらに加速し、ウクライナ侵攻や中国における混乱によって拍車がかかる可能性があります。

Make UKの政策担当ディレクターであるヴェリティ・ダヴィッジ(Verity Davidge)氏は、次のように述べます。

「何十年もの間、メーカーはグローバル化の推進やサプライチェーンの拡大によって効率化を進め、無駄のない製造プロセスを構築し、企業の成長と競争力を維持してきました。ところが、ここ数年の経済的打撃がもたらした危機的な状況により、従来のモデルは崩壊し、企業はビジネス戦略を再評価して、より自国に近いサプライヤーを探さざるを得なくなりました。

その結果、グローバル化の時代はピークを過ぎ、世界規模での貿易における混乱と変動が急速に常態化しつつあると言えます。これにより、多くの企業が『ジャストインタイム』方式を脱却し、『ジャストインケース(もしもの場合に備える)』方式に転換するでしょう。」

インフォアのインターナショナル戦略およびセールスサポート担当シニアバイスプレジデントであるアンドリュー・キンダー(Andrew Kinder)は、次のように補足します。

「ブレグジット、コロナ、欧州情勢の不安定化といった相次ぐ打撃を受け、サプライチェーン戦略はサプライチェーンの脆弱性に注目するようになりました。予測可能性や信頼性に代わって、変動性や不確実性が高まる中で、無駄の排除、ジャストインタイム、オフショアリングといった長年採用されてきた方針が疑問視されつつあります。サプライチェーンのルールが見直され始めています。効率よりもレジリエンスが重要性を増し、次々と起こる打撃に対処するために、サプライチェーン戦略を迅速に調整できる企業が勝者となります。

デジタルテクノロジーは、レジリエンスの高いサプライチェーンを構築するうえで必要な要素の1つです。Make UKと実施した今回の調査は、新しい規範への対応と、混乱を乗り切るためのデジタルテクノロジーの活用について、メーカーにとって非常に重要な洞察を提供します。この調査のスポンサーとして、弊社は、英国政府のHelp to Grow: Digital制度 にサプライチェーンソフトウェアマネジメントが含まれるべきであるという提言を支持しています。」

■英業界団体による政府への提言

Make UKは、本調査により明らかになった、多大な経済打撃や、今後、貿易ネットワークの変動性が常態化する可能性があることを受けて、英国経済が将来の混乱を乗り越える力を保持できるよう、政府に対して以下を提言しました(各項目の解説は「注記」をご覧ください)。

  • 政府は、官民連携レジリエンスタスクフォースを設立する
  • サプライチェーンソフトウェアマネジメントをHelp to Grow: Digital制度に含める
  • 企業の事業計画を支援するために、原材料のリードタイムを報告する公的データを開発し公表する
  • 業界と協力し、大企業がより高い階層でサプライチェーンの可視性を高め、可視性が低い中小企業と情報を共有する方法を模索する
  • ブロックチェーンなどの特定のデジタルソリューションを採用する企業に対して、資本的支出控除または減税の制度を導入する
  • サプライチェーンを支援するために、地域機関を発展させ、長期的なイニシアチブを確立する

注記:

  1. レジリエンスタスクフォースは、サプライチェーンの混乱リスクを評価し、将来起こりうる危機に備えたアクションプランを計画することを目的としています。加えて、英国全体の能力を把握するためのサプライチェーンマッピングや、現在および将来のサプライチェーンに関連する機会や課題に関する証拠資料の作成も行います。
  2. Help to Grow: Digital制度は、中小製造業者のデジタル化推進を加速させるソリューションとして期待されていました。しかし、メーカーは、一部の認定ベンダーのCRMと会計ソフトのみを対象とする現行制度では限界があることを指摘しています。メーカーにとってより有益で利用しやすい制度にするためには、サプライチェーンソフトウェアマネジメントにも対象を拡大する必要があります。
  3. メーカーが原材料のサプライチェーンの混乱による影響を受けているのは明らかです。しかし、現在のリードタイムに関する情報は存在していません。政府は業界と協力して、リードタイムを把握するためのデータを開発・公開し、メーカーが事前に計画を立てられるよう支援するべきです。
  4. Make UKの調査から、特に中小企業において可視性が不足していることが分かりました。大企業やOEMがどのように可視性を高め、より広く共有できるかを探ることで、エンドツーエンドの全体的な可視性を向上させることにつながります。
  5. 企業がサプライチェーン全体にデジタルソリューションを導入することで、エンドツーエンドのパフォーマンス向上につながるという連鎖的な影響があります。
  6. メーカーは、MAS(Manufacturing Advisory Service)のような、企業への強力なサポートサービスを提供する組織を歓迎する傾向にあります。地域的なアプローチには強力なケースがありますが、LEPなどの既存の地域ネットワークと一緒に機能させる必要があります。
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