Loading component...

AIエージェントブームの「罠」。日本企業の「デジタル変革」はなぜ失敗を繰り返すのか

Infor_3D Platform Image_Library_Dark_06.jpg

2026年3月10日

AIエージェントブームの「罠」。日本企業の「デジタル変革」はなぜ失敗を繰り返すのか
2026年3月号『Diamond Harvard Business Review』に掲載された、インフォアジャパン 執行役員副社長 グローバル プロフェッショナルサービス本部長 布施将義と、ソリューションコンサルティング本部長 佐藤幸樹による対談記事を、同誌の許可を得て転載いたします。

***
<<2026/02/10公開 DHBRオンラインタイアップ広告掲載>>

「AIエージェント」がビジネス界に熱狂を呼んでいる。多くの経営者がこの新潮流に熱視線を送るが、そこにはかつての「DXブーム」の既視感が漂う。インフォアジャパンの布施将義氏と佐藤幸樹氏に、日本企業が陥りがちな「デジタル変革」の課題と解決策について語ってもらった。

「手段の目的化」が招く ブームの既視感

「昨今、AIエージェントがバズワード化していますが、これはかつてのDXブームの再来。悪い意味での既視感を覚えます」
そう警鐘を鳴らすのは、インフォアジャパンの副社長、布施将義だ。

ここ数年、AI技術の進化は著しい。経営層が「いち早くキャッチアップしなければ」と焦るのも無理はない。しかし、布施氏はその焦りこそが「罠」であると指摘する。「経営者が目的を持たず、『AIを使って何かやれ』と現場に丸投げする。すると現場はツール選定に終始し、『導入』自体が目的化してしまう。これは過去のDXブームで日本企業が陥った『形だけの変革』と同じ構図です」

実際、多額のIT投資を行っても、生産性向上などの実利を得られている企業は驚くほど少ないことが指摘されている。日本企業のデジタル変革が失敗する構造的な要因はどこにあるのか。

布施氏は、日本企業特有の「100点主義」と「現状維持バイアス」を挙げる。「日本の現場は真面目です。たとえば、現在の業務プロセスの9割がパッケージソフトで賄えても、残りの1割の特殊業務のために、莫大なコストをかけてカスタマイズしようとします。『いまのやり方』を変えたくないからです。しかし、それではシステムが複雑化し、将来的なアップデートや新技術の導入も困難になる事態を招きます」
さらに深刻なのがデータの「サイロ化」だ。同社ソリューションコンサルティング本部長の佐藤幸樹氏はこう指摘する。

「多くの企業で個別システムが乱立し、データが分断されています。AIエージェント機能の大前提は『正しいデータ』。データがばらばらな状態で導入しても、AIは判断基準を持てず、誤った判断を自動化するだけ。これでは変革どころか混乱を招きます」

経営層は「ITはわからない」とIT部門やベンダーに丸投げし、現場は「いまの仕事を変えたくない」と現状維持に固執する。「誰もオーナーシップを持たず、責任を押しつけ合うこの『組織的な無関心と硬直化』こそが、変革を阻害する真因にほかなりません」

では、この閉塞感をどう打破すればよいのか。その解決策の一つとしてインフォアが提唱するのが、業界特化型クラウドERPで実現する「Industry Complete(インダストリー・コンプリート)」という概念だ。佐藤氏は最大の特徴を「細分化された業界への特化」だと語る。「自動車部品、食品飲料など、サブインダストリー(業種)ごとに、業界特有の機能やベストプラクティス(標準プロセス)が実装済みです」(佐藤氏)

これは、日本企業に多い「ゼロからつくる(スクラッチ開発)」アプローチからの脱却を意味する。汎用ERPをカスタマイズするのではなく、標準プロセスに業務を合わせる「Fit to Standard」のアプローチだ。

これにより、導入スピードは劇的に向上し、常に最新のテクノロジーを享受できる環境が整う。

業界の「文脈」に合わせてAIが判断する

この「Industry Complete」というコンセプトに基づいたERPこそ、AIエージェントはその真価を発揮する。インフォアのAI戦略は、単なるツールの提供に留まらない。業界に特化したデータモデルと業務プロセスに、AIが完全に統合されている。
「インフォアは『インダストリー・カウンシル』という会議体を通じ、世界中のユーザー企業の声を製品開発に反映させています」(佐藤氏)

その成果の実例として、たとえば、需要が変動するトラックメーカーでは、紙で送られてくるばらばらな受注データを、OCRとAIが自動で読み取り、意味を理解して基幹システムに取り込むことで、入力工数を劇的に削減した。

特殊フォークリフトメーカーでは、AIが過去のメンテナンス履歴から必要な交換部品をリコメンドすることで、サービスマンの初回訪問での修理完了率を30%もs日向上させたという。

「これらは、業界の『文脈』を理解したAIだからこそ実現できた成果です」と佐藤氏は強調する。

マルチテナント型のクラウドであるため、半年に一度のペースで機能がアップデートされ、AWS(Amazon Web Services)と共同開発された最新の生成AI技術なども即座に利用可能となる。「自分たちで変化に対応しなくても、プラットフォームが進化させてくれる」(佐藤氏)という環境は、リソース不足に悩む日本企業にとって強力な武器となるはずだ。

経営者に不可欠な「マインドセット変革」

課題はあるが、AIエージェントブームは、日本企業にとって「変革のチャンス」だ。だが、それをつかむためには、経営者自身の「マインドセット変革」が不可欠である。
布施氏は、経営者に向けて、ITに対する「意識改革」と「学習」の重要性を説く。
「もはやITは単なる効率化のためのコストではなく、『競争力の源泉』と捉え直す必要があります。そのためには、経営者自身もある程度のテクノロジーを学び、自社の課題を客観視する目を養わなければなりません」

ビジネスとITが一体化したいま、その活用法は経営戦略そのものになっているのである。現場の抵抗を押しきってでも、全体最適のために業務を標準化する。その「痛みを伴う決断」を下せるのは経営者しかいないのだ。

「我々は単なるベンダーではなく、変革に伴走するパートナーでありたい。日本の製造業が輝きを取り戻すために、我々の知見を使い倒してほしい。覚悟を決めた経営者となら、我々はどこまでもともに走ります」(布施氏)

バズワードの罠を抜け出し、足元の「土台」を固めた企業だけが、AI時代の勝者となる。インフォアの「Industry Complete」は、そのための確かな羅針盤となるだろう。

Loading component...