February 9, 2022
3回にわたるブログ対談にて、ワタミ株式会社のIT戦略本部 部長 高井 直之氏に、インフォアジャパン プロフェッショナルサービス コンサルティングプラクティス マネージャーの石川 光幸が、SCMプロジェクト成功の秘訣について、お話を伺います(以下敬称略)。最終回は、アジャイルとウォーターフォールの共存についてです。
石川:これまで「ビジネスデータリエンジニアリング」、「マルチベンダー管理」について、高井さんのご経験をお聞きしてきました。
本日は最終回であります、異なる手法で開発されたシステム間の接続における「導入手法」についてお話をお聞かせいただきたいと思います。
私たちインフォアには、アプリケーション導入手法に「IDM/Infor Deployment Method」があります。これはアジャイル型の手法です。一方、多くのITベンダーでは、アプリケーションは、ウォーターフォール型で導入されます。2つの導入手法が共存すると、なかなか接続に苦労することが多くありますが、ワタミプロジェクトではとてもうまくコントロールできていたと思っております。その結果、オンスケジュールで本番稼働ができたと思います。その秘訣・コツなどをお聞かせください。
高井:そこが一番苦労した点だと思っています。特に、インターフェイス開発に関する部分ですと、インフォアさんのマイルストーンを基準にすると、ウォーターフォール型のベンダーさんに協力いただき、スケジュールを合わせていただかなくてはいけませんでした。
石川:そうですよね。そういったスケジュールの調整が大変ですよね。
高井:そうです。それでもやはり、会話することが重要です。
石川:あまりマイクロマネージメントにならずに、1つずつのタスクではなく、マイルストーンで合わせましょう、という方法を取られていましたね。私の中で印象に残っているのは、システム間の接続のお話です。
高井:覚えています。インフォア側ではBOD(Business Object Diagram)という、すぐにシステム間が繋がる仕組みがあるので、インフォアさんとしては相手方のシステムと接続確認だけでも行いたいわけです。その際に、まずサーバーだけでも先行して用意いただきたいという話になった際、相手システムのベンダーさんと調整しましたね。
石川:はい、システム間の接続ではセキュリティーやファイル形式など、マッピング以前の問題が発生するリスクがありますので、それらを接続テスト前に解決しておきたかったのです。そして、まさに、この進め方がアジャイルアプローチでした。
高井:はい、そのために私からも接続先のシステムベンダーさんへ協調の重要性を訴求しました。
石川:はい、とても助かりました。ウォーターフォール型のベンダーさんにもご協力いただけたので、素早く対応することができました。一度にすべてを開発して、一度にすべてを接続することのないように、開発もグルーピング単位で、小刻みに繋げることをやりましたね。中でも、うまくいった要因には、標準BODのファイル定義を全て共通のドキュメント管理にオープンし、接続先のシステムベンダーさんがマッピングの更新などをできるようにしたことがあげられます。もちろん、相手側のシステムベンダーさんにこのファイル定義の見方を説明しました。
この様に両者のファイルを共有し更新もできるようにすることで、接続先ファイルの理解を深め、変更の抜け漏れをなくし、対応速度を速める効果があります。それと、インフォアが気を付けた点としては、BODの標準ファイル定義にはプロジェクトで不要な項目も多くあるのですが、第一弾の接続では、それらを全て残すことでした。その理由は、アジャイルアプローチをとっていますので、後になって相手側のシステムが追加項目を必要とした場合でも柔軟に対応できるようにするためです。
高井:会社の垣根を越えてオープンにしましたよね。この進め方をすることで、初めの方に問題を洗い出すことができました。開発ができたものから、先方に協力していただき、動かしてテストしていくことができたため、スケジュールを守れたのだと思います。
石川:本当にその通りだと思います。ベンダーサイド(システム側)は人としても繋がりましたし、データそのものも繋がりましたね。マルチベンダーになると役割の境界線や互いのスケジュール調整で問題が出るものですが、その間にワタミ様が入られ強力なリーダシップを取られたことで、会社の垣根を超えたチームになれました。
今回、3つのトピックでユーザ目線のご意見を伺いました。これらのお話や経験は、ERP導入をお考えの方々にはとても有効なお話だったと思います。 ぜひ今後もご経験をお聞かせいただきたく思います。この度は、インタビューさせていただきありがとうございました。
ワタミ株式会社
ワタミグループは1984年に創業、「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになろう」という理念のもと、外食・宅食・農業・環境などの事業を展開しています。これらの事業を通じて持続可能な「循環型6次産業モデル」を構築し、環境負荷を低減するRE100宣言、再生可能エネルギー事業にも取り組んでいます。