食品メーカーが製品ライフサイクルを計画し、サステナビリティを最適化する方法

close up of vegetables for sale

June 12, 2022担当 北川 裕康

国連が提唱するように、水・食料・エネルギーの結びつきは、SDGsのコアに位置します。また、食品関連は、世界の温室効果ガス排出量の26%を占めており、食品メーカーや加工業者がサステナビリティを高めるよう圧力をかけられているのも理解できます。企業はこの課題をチャンスに変え、サステナビリティと社会的責任に関して高まる消費者の期待に応える製品を作る一方、着実に増加する関連法規の要件を確実に遵守する必要があります。特に製品開発においては、食品企業は製品のサステナビリティを最適化するために、よりスマートに、そして、より真摯に取り組まなければならなくなってきています。

消費者主導への変化

ソーシャルメディアにおけるインフルエンサーの増加や、気候変動を含む、サステナビリティに関するメディア露出の増加は、より多くの消費者が、食品を含め、毎日購入しているものに対する可視性を求めていることを意味します。そして、それは製品そのものだけでなく、パッケージや輸送の方法についても関心を寄せています。

ドイツのGrüne PunktやフランスのAGEC(Anti-Wastage and Circular Economy)など、いくつかの国では包装に関する基準が設けられており、食品メーカーにとってもサステナビリティに関する法律は増加傾向にあることは間違いないでしょう。輸出を拡大したい日本の食品メーカーも他人事ではありません。栄養価やアレルゲンの表示要件が標準化されたように、今後数年間は二酸化炭素排出量や水の使用量などの規制が強化される可能性があります。

企業の「サステナビリティ」の証明は、関心は高いですが、法律的に「営業許可証」にはまだなっていません。しかしサステナビリティを通じて他社との差別化を図る、攻めの姿勢をもった食品企業は増えています。しかし、製品が「サステナブル」であるために満たすべき条件とは何かという定義がまだ曖昧です。特に、新しい「サステナブル」な製品を開発する場合、食品メーカーはおそらくこの課題に直面しています。

サステナビリティの範囲

最も単純かつ基本的なアプローチは、所有または管理されている供給源、つまり食品メーカーの範囲内にあるすべての要因の環境影響を判断することです。さらにもう一歩踏み込んで、事業で消費される電気、蒸気、暖房、冷却の各プロセスによる環境への影響も含めます。しかし、標準的なアプローチは、さらに範囲を広げ、農場から工場までのサプライチェーンの各段階の環境影響を考慮することです。そして、もし業界が本当に真剣にサステナビリティを考えるのであれば、農場だけでなく、廃棄物やリサイクルの選択肢を分析し、循環型経済のループを閉じることに目を向ける必要があります。業界では、食品廃棄を少なくするための動脈と、リサイクルを進める静脈と表現されることがあります。

しかし、現在、何が確かなサスタナビリティの報告であるかについてのガイドラインはなく、この点を明確にする必要があります。非財務会計で、ESG(環境、ソーシャル、ガバナンス)の報告を扱うような方向性なので、環境において、いずれは明確になると考えます。

製品ラベリングに一貫性と共通性がないことは、消費者が複数のエコラベルについて明確さを求め、業界自体が必ずしも説明できる立場にないという状況を助長しています。サステナビリティはどこで始まり、どこで終わるのでしょうか?例えば、土壌の肥沃化を促進する農法を提唱する再生農業への関心が高まっており、生産プロセスで使用する水の量を減らそうとするサプライヤーも増えています。コーピー豆のカスを、土壌の改良に使い、生産量を高めるプロジェクトが日本で実施されていると最近聞きました。同時に、サステナビリティには、農家やサプライヤーの社会的・経済的な利益享受の向上も含まれます。推進には、農家やサプライヤーに、義務だけでない、モチベーションが必要ということです。

では、サステナビリティのパラメータはどこにあるのでしょうか。結局のところ、現時点では、製品がどの程度サステナブルであるかを決定する際に考慮すべき複数の要素を定義するのは、生産者と加工業者にかかっています。これには、サステナビリティの透明性を求める顧客の要望に応えることや、より公平な競争の場を作り出すはずの具体的な法的要件の導入に対応できるプロセスを整備することが含まれます。

製品ライフサイクル管理が1つの鍵

サステナブルな新製品を市場に投入する場合、食品企業にとって最大の課題は、サプライチェーン全体から得られる膨大な量のデータにどう対処するかです(もちろん、サプライチェーン・パートナーから受け取る日付が正確であることを確認するのは言うまでもありません)。それも静的なデータではなく、例えば原材料の原産国や輸送方法、包装の仕方などに応じて製品特性が固定されない動的なデータです。サステナビリティを決定するために考慮すべき要素が増えているため、製品ライフサイクル管理と製品開発の複雑さは驚異的な速さで増しています。つまり、もはや製品の配合だけでなく、製品開発プロセスの合理化と自動化、適切で魅力的な製品をできるだけ早く市場に投入することが重要なのです。

このような状況において、PLM(製品ライフサイクル管理)はもはや表計算ソフトでは不十分です。スプレッドシートでは、膨大な量の動的データを迅速かつ効果的に処理することができません。スプレッドシートはミスを犯しやすいだけでなく、すべての関係者の行動や活動を統合するために部署から部署へと渡されるため、時間がかかります。適切な PLM ツールを導入することで、企業はアイデアを収集し、構造化されたステージゲートプロセスでそれらを検証し、決定基準や説明責任だけでなく、サステナビリティの証明にも新たな透明性をもたらすことができるのです。

継続的なジャーニーは続く

製品のライフサイクルは、製品開発に始まり、製品開発に終わるのではなく、発売後も長く続きます。例えば、サプライヤーの変更、原材料の変更、新しい法律への対応などの際にサステナビリティの要素を再計算する能力は非常に重要であり、スプレッドシートに任せておくには複雑で時間がかかりすぎるものなのです。適切な PLM ソリューションは、このプロセス全体を管理し、特定の製品の仕様を変更し、仕様とコストだけでなく、サステナビリティも最適化するために処方をどのように変更する必要があるかを伝えることができます。

さらにもう一歩踏み込んで、製品の最終段階の管理も考慮しなければなりません。つまり、PLMは農場から食卓までだけではなく、パッケージのリサイクル性や、おそらく責任ある食品廃棄物管理オプションまで視野に入れ、特定の製品や食品事業のサステナビリティを高めるためにさらなる努力をすることになります。

より多くの食品企業が真にサステナブルな製品を実現しようと努力する中、そのような製品を迅速に市場に投入する能力は極めて重要であり、ますます厳しくなる競争の中で真の競争優位を築くのに役立つものだと考えます。サステナビリティを最適化する鍵はテクノロジーであり、食品ビジネスは変化する要求や法律に適応しながらも、消費者に魅力的な製品を提供することができるようになります。適切なテクノロジーを導入することで、食品ビジネスは製品開発プロセス全体を合理化し、最高水準のサステナビリティを実現するためのインフラを整備することができるのです。

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